人手不足倒産が過去最多に|賃上げと人材確保の両立が中小企業の重要課題に

人手不足や賃金上昇を背景に、中小企業の経営環境が厳しさを増しています。東京商工リサーチが公表した2026年度上半期(4~9月)の調査では、人手不足を原因とする倒産が240件となり、4年連続で過去最多を更新しました。

一方、厚生労働省の毎月勤労統計調査では、実質賃金が8カ月連続で増加するなど、労働者の賃金環境には改善の動きも見られています。今回は、人手不足倒産の現状と賃金動向を踏まえ、中小企業が考えておきたい人材確保と労務管理のポイントについて解説します。

人手不足倒産は240件、4年連続で過去最多

東京商工リサーチによると、2026年4月から9月までの人手不足倒産は240件となり、前年同期比17.0%増加しました。特に注目されるのは、倒産の原因として「人件費の高騰」が増えていることです。

人件費の高騰による倒産は130件で、前年同期から75.6%増加し、人手不足倒産全体の半数以上を占めました。人材を確保するために賃金を引き上げても、その負担を商品やサービスの価格に十分転嫁できなければ、企業の収益を圧迫することになります。

特に中小企業では、人件費の増加と人材不足への対応を同時に進めなければならない状況が続いています。

実質賃金は8カ月連続で増加

一方、労働者の賃金には改善傾向が見られます。厚生労働省が公表した2026年8月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価変動の影響を考慮した実質賃金は前年同月比1.5%増加しました。

実質賃金のプラスは8カ月連続となり、約10年ぶりの長期間にわたる増加となっています。また、名目賃金は31万1,364円で、前年同月比3.8%増加しました。

賃金上昇が続くことは労働者の生活にとって前向きな動きですが、企業にとっては人件費負担の増加につながります。今後は、単純な賃上げだけでなく、生産性の向上や人材の定着を含めた総合的な対応が重要になるでしょう。

「年収の壁」による働き控えは400万人超

人手不足の要因の一つとして、パートタイマーなどの短時間労働者による「働き控え」も指摘されています。伊藤忠総研の推計では、2026年4~6月に年収の壁を意識して労働時間を抑えている短時間労働者は408万人に上るとされています。

また、厚生労働省の統計によると、2025年の短時間労働者1人当たりの月間総実労働時間は79.1時間で、2019年と比較して約7%減少しています。

短時間労働者数そのものは増加しているものの、1人当たりの労働時間が減ることで、企業全体の労働力確保が難しくなるという課題があります。なお、「年収の壁」には税金や社会保険、企業独自の配偶者手当など複数の仕組みが関係するため、従業員ごとの状況に応じた説明が必要です。

中小企業が取り組みたい3つの対策

人手不足と賃上げへの対応では、次のような取組みが考えられます。

1.給与体系と人件費の見直し

基本給や各種手当の構成を確認し、将来の人件費を見据えた賃金制度を整備することが重要です。

2.働きやすい職場環境の整備

有給休暇の取得促進、柔軟な勤務時間制度、育児・介護との両立支援などを進めることで、従業員の定着率向上が期待できます。

3.業務効率化と生産性向上

業務のデジタル化や作業手順の見直しによって、限られた人員でも業務を継続できる体制づくりが求められます。

まとめ

人手不足倒産の増加は、企業にとって人材確保と人件費管理の両立が重要になっていることを示しています。
賃金を引き上げるだけではなく、従業員が安心して長く働ける職場環境を整備し、生産性向上を進めることが持続的な経営につながります。

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