
長時間労働への監督指導が強化|労働基準監督署の調査結果と企業が見直すべき労務管理
長時間労働による健康障害を防ぐため、労働基準監督署による監督指導が引き続き行われています。
厚生労働省が公表した2025年度の監督指導結果では、長時間労働が疑われる29,150事業場を対象に監督指導が実施されました。
そのうち、12,811事業場に対して、過重労働による健康障害を防止するための措置を講じるよう指導が行われています。
今回は、監督指導の結果と、企業が確認しておきたい労働時間管理や労災保険について解説します。
約1万2,800事業場に健康障害防止措置を指導
厚生労働省の発表によると、2025年度に長時間労働が疑われる事業場を対象として行われた監督指導では、29,150事業場が対象となりました。
このうち、過重労働による健康障害防止措置について指導を受けた事業場は12,811事業場となっています。
また、時間外労働の状況に関しては、月80時間を超える残業について6,717事業場に指導が行われました。
さらに、月45時間以上80時間以内の残業があり、月45時間以内とするよう指導された事業場は5,990事業場となっています。こうした結果から、長時間労働への対応が引き続き重要な労務管理上の課題となっていることが分かります。
36協定を締結していれば長時間労働が認められる?
時間外労働を行わせる場合には、原則として36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
しかし、36協定を締結していれば、無制限に残業させることができるわけではありません。
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があり、特別条項付き36協定を締結する場合でも、原則として次の上限を守る必要があります。
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計は、2~6カ月の各平均で80時間以内
- 月45時間を超える時間外労働は年6カ月まで
なお、建設業や自動車運転業務、医師などについては、一部異なる規制や特例が設けられています。
また、法律上の上限内であっても、長時間労働による健康障害を防ぐための対応は必要です。
労災保険の適用範囲も見直しへ
労働者の安全を守る制度として、労災保険も重要です。労災保険は、業務上の事故や通勤災害などによって労働者が負傷・疾病・障害を負った場合などに、必要な保険給付を行う制度です。
原則として、労働者を1人でも使用する事業は労災保険の適用対象となります。
一方、農林水産業の一部小規模事業については、これまで暫定任意適用事業として取り扱われてきました。
今回の制度改正では、この取扱いを廃止し、2031年4月1日から強制適用とする方向で政令案が示されています。
対象となる事業者では、今後の施行内容を確認し、必要な手続きに備えることが重要です。
企業が日頃から取り組むべき労務管理
長時間労働や労災トラブルを防ぐためには、日常的な労務管理が欠かせません。
特に、次のような点を確認しておきましょう。
- 36協定の締結・届出が適切に行われているか
- タイムカードなどで労働時間を正確に把握しているか
- 時間外労働が上限規制を超えていないか
- 長時間労働者に対する健康確保措置が行われているか
- 労働保険の加入手続きや年度更新が適切に行われているか
- 就業規則と実際の勤務実態に相違がないか
また、労働基準監督署による調査が行われた場合には、労働時間の記録や賃金台帳、36協定などの書類を確認されることがあります。日頃から適切に記録・管理しておくことが、労務トラブルの防止にもつながります。
まとめ
長時間労働に対する監督指導は、企業にとって重要な労務管理上の課題です。
36協定の締結や届出だけでなく、実際の労働時間の把握、従業員の健康管理、労働保険の適切な運用など、総合的な対応が求められます。


