
労働条件の明示義務違反が34%増加|勤務間インターバルとメンタルヘルス対策も重要に
企業の労務管理をめぐり、労働条件の明示や長時間労働対策の重要性が高まっています。
厚生労働省の調査では、2025年の労働条件明示義務違反が前年から34%増加し、1万9,049件となりました。
また、勤務間インターバル制度や「つながらない権利」についても議論が進められており、従業員の健康を守るための新たな取組みが注目されています。
今回は、労働条件の明示ルールと、企業が見直しておきたい労働環境について解説します。
労働条件明示義務違反が1万9,049件に
厚生労働省の「労働基準法等に基づく監督業務実施状況」によると、2025年の労働条件明示義務違反は1万9,049件となり、前年比34%増加しました。
労働条件の明示は、労働基準法に基づき、企業が労働者を採用する際などに行わなければならない重要な手続きです。2024年4月には労働条件明示のルールが改正され、新たな明示事項が追加されました。
具体的には、次のような事項が対象となっています。
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 有期労働契約の更新上限の有無と内容
- 無期転換申込権が発生する契約更新時の申込機会
- 無期転換後の労働条件
これらは該当する労働者や契約の状況に応じて明示が必要となります。
従来の雇用契約書や労働条件通知書をそのまま使用している企業では、改正内容に対応できていない可能性があります。
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻から翌日の始業時刻までに、一定時間以上の休息を確保する制度です。
例えば、11時間の勤務間インターバルを設定している企業で、従業員が午後10時に退勤した場合、原則として翌日の始業時刻を午前9時以降とする考え方です。
この制度は、従業員の睡眠時間や生活時間を確保し、長時間労働による健康障害を防ぐことを目的としています。しかし、2025年の導入率は6.9%にとどまっています。厚生労働省の労働政策審議会では、原則11時間以上の休息を義務化することなどについて議論が行われています。
現時点では一般企業に対して一律11時間の勤務間インターバルを義務付ける制度が確定したわけではありませんが、今後の制度動向に注目が必要です。
「つながらない権利」も議論に
近年は、スマートフォンやチャットツールの普及によって、勤務時間外でも仕事の連絡を受ける機会が増えています。こうした状況を背景に、「つながらない権利」についても議論が進められています。
つながらない権利とは、勤務時間外に仕事上の連絡や対応を求められないこと、あるいは対応しないことを認める考え方です。例えば、休日や深夜に上司から業務連絡が頻繁に届き、従業員が対応を余儀なくされる場合には、休息時間の確保が難しくなる可能性があります。
企業としては、勤務時間外の連絡ルールを明確にすることや、緊急時の対応体制を整えることなどが考えられます。
精神障害による労災認定も増加
長時間労働や職場の人間関係に関する問題は、メンタルヘルスにも影響します。厚生労働省の2026年版「過労死等防止対策白書」に関する報道では、精神障害による労災認定が過去最多の水準となり、10年前と比較して大きく増加したとされています。
特に医療・福祉分野での増加が目立ち、上司とのトラブルやカスタマーハラスメントなど、対人関係による心理的負担が問題となっています。企業には、労働時間の適切な管理に加えて、ハラスメント防止措置や相談体制の整備などが求められます。
企業が確認しておきたい労務管理のポイント
労務トラブルを防止するためには、次のような事項を定期的に確認しておくことが重要です。
- 労働条件通知書が最新の法令に対応しているか
- 有期雇用契約の更新条件が明確になっているか
- 勤務時間や時間外労働を正確に把握しているか
- 勤務時間外の業務連絡に関するルールがあるか
- ハラスメント相談窓口が適切に機能しているか
- 従業員の健康管理やメンタルヘルス対策を実施しているか
特に労働条件通知書や就業規則は、法改正に応じて定期的に見直すことが大切です。
まとめ
労働条件明示義務違反の増加や勤務間インターバル制度の議論など、企業には従来以上に適切な労務管理が求められています。従業員が安心して働ける職場環境を整備することは、労務トラブルの防止だけでなく、人材の定着や企業の信頼向上にもつながります。


